九州大学大学院理学研究院物理学部門
磁性物理学研究室
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4f電子系

希土類元素では4f電子が磁性の主役である.この4f電子軌道の外側には5s軌道,5p軌道という電子の詰まった軌道が存在する.さらにその外側の5d軌道に1個,6s軌道に2個の電子があり,これらの3つの電子が結合にあずかる.すなわち,4f電子はふつう化学結合にあずかることはなく,内側に存在するので,隣からの影響も受けにくい.金属でも,絶縁体でもこのような希土類を通常3価の状態と呼ぶ.たとえばEuでは3価の状態(Eu3+)では4f軌道に電子が6個存在する.ところがEuの場合,伝導電子から14f軌道に電子が入った2価(4f電子が7個)となる場合(Eu2+)も存在する.さらに面白いことに,価数が時間空間的に揺動して,2価と3価の中間の値をとるような化合物もあり,これを価数揺動という.

価数転移
Eu系の価数揺動の特徴は,価数が強く温度依存することである. Eu2+7µBの磁気モーメントをもつのに対して、Eu3+は非磁性である.絶対零度ではエントロピーをゼロにするため,Euの価数は3価に近づく.この価数の温度変化が一次転移的に起こるとき,これを価数転移という.このような価数転移は温度以外に圧力や磁場によっても生じる.特に磁場による価数転移は,われわれが世界で初めてEu(Pd1-xPtx)2Si2EuNi2(Si1-xGex)2について観測したものである(上図 右).
最近,当研究室ではEuRh2Si2が高圧下で価数転移することを見出した(下図).この転移圧力はこれまでのEuNi2Ge2よりも低いことから,いろいろな物性が測定しやすい.また高圧下で温度を上げても価数転移が起こり,その温度は圧力や磁場によって容易に変化させられることもわかってきた.現在単結晶作製に取り組んでおり,今後の研究の進展が大いに期待されている.
また価数転移によってホール効果や磁気抵抗にも大きな異常が現れる.最近強磁場,高圧のもとでこのような物性を測定する手法が完成し,EuNi2Ge2EuRh2Si2で興味深いデータが得られつつある.
価数秩序

価数転移は2種類の価数状態が時間空間的に変動している状態から,一方への価数状態への転移であるが,2種類の価数状態が低温で空間的に秩序して,規則的に並ぶことによりエントロピーを下げることがある.これは3d電子系では電荷秩序として知られる現象である.
3d電子系の場合電荷秩序が起こると電子は局在するので,系は絶縁体になる.これに対して4f電子系では,もともと伝導バンドにも電子がたくさん存在しているので,価数が秩序化しても金属にとどまっている.電荷秩序と異なるという意味で,われわれはこれを価数秩序と呼んでいる.
EuPtPは代表的な価数秩序物質である.これまでの研究でこの物質はT1=240 KT2 =195 Kに一次の相転移があり,T > T1で価数揺動状態であるが, T2< T < T1T < T2はそれぞれ異なる価数秩序状態であると考えられている.われわれはSPring8とX線共鳴散乱の共同研究を行い, T2< T < T1T < T2の価数秩序状態の構造を決定することに成功した
(下図右).

YbPdも高温ではYb2+に近い状態とYb3+に近い状態が1:1の割合で共存し,価数揺動状態になっている.この物質の価数はほとんど温度変化しない.これまでの研究でT1 = 125KT2 = 105K で一次転移を起こすことが知られている.われわれは東大物性研や広島大学などとの共同研究により,T=T1で立方晶から正方晶への構造相転移が起こること,T=T2(h/2 0 0)h=奇数)の超格子反射を観測し,価数秩序が起こっていることを明らかにした(下左図).また,この物質の磁気転移温度は圧力を加えると低下することを見出した(下右図).Yb化合物では圧力は磁気状態を安定にする方向に働くので,この現象は大変珍しい.現在高圧下の基底状態を解明するための研究がすすめられている.
参考文献

価数転移

1. Field-induced valence transition of Eu(Pd1-xPtx)2Si2, A. Mitsuda, H. Wada, M. Shiga, H. Aruga Katori and T. Goto, Phys. Rev. B, vol. 55 (1997) 12474-9.

2. Temperature- and field-induced valence transitions of EuNi2(Si1-xGex)2, H. Wada, A. Nakamura, A. Mitsuda, M. Shiga, T. Tanaka, H. Mitamura and T. Goto, J. Phys., Condens. Matter, vol. 9 (1997) 7913-23.

3. Pressure-induced valence transition in antiferromagnet EuRh2Si2, A. Mitsuda , S. Hamano, N. Araoka, H. Yayama and H. Wada, J. Phys. Soc. Jpn. vol. 81 (2012) 023709.

4. Valence transition induced by pressure and magnetic field in antiferromagnet EuRh2Si2, Akihiro Mitsuda, Suguru Hamano and Hirofumi Wada, J. Korean Phys. Soc. vol. 62 (2013) 1787-1791.

 

価数秩序

1. Origins of Phase Transitions in Valence Fluctuating YbPd, Akihiro Mitsuda, Masaki Sugishima, Takumi Hasegawa, Satoshi Tsutsui, Masahiko Isobe, Yutaka Ueda, Masayuki Udagawa, Hirofumi Wada, J. Phys. Soc. Jpn. vol. 82 (2013) 084712 (5 pages).

2. Observation of two charge ordering transitions in the valence-fluctuation EuPtP by resonant x-ray diffraction, T. Inami, S. Michimura, A. Mitsuda and H. Wada, Phys. Rev. B vol. 82 (2010) 195133 1(5 pages).

3. Field-induced valence transition in EuPtP1-xAsx, A. Mitsuda, T. Okuma, M. Sugishima, H. Wada, K. Sato and K. Kindo, Eur. Phys. J. B vol. 85 (2012) 2011396 (5 pages).

 
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